【2025年版】食品工場の改修はなぜ専門業者が必須なのか?|HACCP準拠と生産性を両立させる秘訣

工場の床にできた僅かなひび割れや、壁紙の剥がれ。「気にはなっているが、日々の生産が忙しくて見て見ぬふりをしている…」。工場の設備管理責任者として、このようなジレンマを抱えていらっしゃる方は少なくないでしょう。施設の老朽化は避けられない課題ですが、特に食品や飲料を製造する工場において、その改修は単なる「補修工事」では決してありません。


もし、その改修を「一般的な塗装工事と同じ」とお考えなら、HACCP(ハサップ)監査での厳しい指摘や、最悪の場合、異物混入による生産停止、製品回収といった事業継続に関わる重大なリスクを招く可能性があります。


本記事では、佐賀・福岡エリアで数々の工場改修を手掛けてきた専門家の視点から、食品工場の改修がなぜ専門業者にしかできないのか、その理由をHACCPの基準に沿って徹底解説します。



1. 目的が全く違う!「一般的な塗装」と「食品工場の改修」の決定的違い

一般的なオフィスビルや倉庫の塗装工事と、食品工場の改修とでは、求められる目的が根本的に異なります。


一般的な塗装工事の目的は、主に「建物の美観維持」と、雨風や紫外線から構造体を守る「長期的な保護」にあります。もちろん、これらも食品工場にとって重要な要素ですが、それ以上に優先されるべき、より高度で専門的な目的が存在します。


食品工場における改修の真の目的は、以下の通りです。


  • HACCPに準拠した衛生環境の構築と維持:安全な食品を製造するための大前提です。
  • 異物混入リスクの徹底的な排除:製品への物理的・化学的・生物学的汚染を防ぎます。
  • 強力な洗浄・殺菌に耐えうる高耐久な表面の実現:日々の過酷なメンテナンスに耐え、長期的に衛生レベルを維持します。
  • 従業員の安全確保と生産性の維持・向上:滑りにくい床や明るい環境は、事故防止と効率化に繋がります。


この目的の違いを理解する上で最も重要なのは、「食品工場の床や壁は、生産ラインや充填機と同じ『生産設備の一部』である」という認識です。単なる建物の構成要素ではなく、安全な製品を安定的に作り出すための重要な「装置」として捉える必要があります。この認識の有無が、工事の計画、材料選定、施工品質、ひいては貴社の製品の安全性と事業継続性に、天と地ほどの差を生むのです。



2. HACCP監査官はここを見る!塗装・床に求められる5つの必須性能

HACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point)の考え方に基づけば、食品を取り扱う施設の床や壁は「清掃・洗浄・殺菌が容易で、非吸収性の材質であること」が基本原則として求められます。これを具体的に実現するためには、以下の5つの性能が不可欠です。監査官もこれらのポイントを厳しくチェックします。


① 平滑性(ひび割れ・隙間がないこと)

床のコンクリートにできた僅かなひび割れ、壁のパネルの継ぎ目、設備配管との取り合い部分の隙間。これらは、日常的な清掃・洗浄を行っても、水分や食品残渣(栄養分)が残りやすく、リステリア菌やサルモネラ菌などの食中毒菌が繁殖するための格好の「隠れ家」となります。目に見えないレベルで増殖した菌が、製品や従業員の手指を介して汚染を広げるリスクがあります。したがって、床や壁の表面は完全にシームレス(継ぎ目なく)で、凹凸がなく滑らかでなければなりません。


② 非吸収性(液体を吸わないこと)

一般的なコンクリートやモルタルは、目に見えない無数の微細な穴が開いた「多孔質」な素材です。そのため、水分、油、調味料、血液などをスポンジのように吸収してしまいます。一度内部に浸透したこれらの有機物は、内部で腐敗し、悪臭の原因となるだけでなく、細菌の栄養源となり、コンクリート自体の劣化も早めます。専門的な改修では、適切な塗料や塗床材で表面を完全にコーティングし、液体が一切内部に浸透しない状態を作り出す必要があります。


③ 耐久性(薬品や熱水に強いこと)

食品工場の床や壁は、製品の安全性を確保するため、日常的に次亜塩素酸ナトリウムなどの強力な殺菌剤や、場合によっては80℃以上の熱水で洗浄されます。また、食品の種類によっては、酸性やアルカリ性の強い原料・調味料が床にこぼれることもあります。一般的な塗料では、これらの化学的・物理的な負荷に耐えられず、数ヶ月から1年程度で塗膜が膨れたり、剥がれたり、変色したりしてしまいます。剥がれた塗膜片は、製品への異物混入という最悪の事態を引き起こす直接的な原因となるため、使用環境に応じた高い耐久性が不可欠です。


④ 防塵性(ホコリが出ないこと)

長年使用されたコンクリート床は、表面が摩耗・劣化し、歩行や台車の通行によって白い粉塵(ダスト)を発生させることがあります。この粉塵もまた、製品への重大な異物混入リスクです。特に、包装工程など清浄度が求められるエリアでは致命的です。床表面を硬質で耐摩耗性に優れた塗膜で覆い、粉塵の発生を抑制することが不可欠となります。


⑤ 安全性(滑りにくいこと)

水や油、粉体などが床に散乱しやすい食品工場では、従業員の転倒事故リスクが常に存在します。安全な作業環境を確保するため、床の表面には適切な防滑性(滑りにくさ)が求められます。ただし、過度に凹凸を付けすぎると、清掃性が低下し、汚れが溜まりやすくなるという別の問題が発生します。そのため、作業内容や使用する履物などを考慮し、清掃性と安全性のバランスが取れた、最適な防滑レベルを設定する必要があります。



3. なぜ高価なのか?食品工場で使われる特殊な塗料・床材の世界

「食品工場向けの床材や塗料は、一般的なものに比べてなぜこんなに高価なのか?」と疑問に思われるかもしれません。それは、前述した厳しい要求性能を満たすために、一般的な塗料とは全く異なる、高度な技術が投入された特殊な材料だからです。「高い」のではなく、それだけの「価値」があるのです。代表的なものをいくつかご紹介します。


水性硬質ウレタン系塗床材(例:ユークリート)

この材料の最大の特長は、「耐熱水性」に非常に優れている点です。80℃以上の熱水を頻繁に使用する調理場や釜場、高圧スチーム洗浄を行うエリアに最適です。熱による膨張・収縮率が下地のコンクリートに近いため、熱衝撃による塗膜の剥離や浮きが起きにくい設計になっています。また、耐薬品性や耐摩耗性にも優れ、フォークリフトの走行にも耐える強度を持っています。まさに食品工場の過酷な環境のために開発された材料と言えるでしょう。


エポキシ樹脂系塗床材

「耐薬品性」に優れており、酸やアルカリ性の洗浄剤、消毒液(次亜塩素酸ナトリウムなど)を使用するエリアに適しています。また、硬化後の塗膜は非常に硬く、耐摩耗性にも優れています。無溶剤タイプを選べば、施工中・施工後の臭気も少なく、環境にも配慮できます。シームレスで光沢のある美しい仕上がりになるため、クリーンな環境が求められる充填室や包装室、研究室などで広く採用されています。


MMA(メタクリル酸メチル)樹脂系塗床材

この材料の最大のメリットは、驚異的な「速乾性・低温硬化性」です。一般的なエポキシ樹脂やウレタン樹脂が完全に硬化するまでに数日を要する場合があるのに対し、MMA樹脂は施工後わずか1〜2時間程度で硬化し、歩行や軽作業が可能になります。この特性により、週末の2日間だけ、あるいは工場の短い休業期間を利用した超短期工事が可能となり、「生産を止められない」というお客様の最大の課題を解決することができます。ただし、施工中の臭気が強いというデメリットもあるため、換気計画などが重要になります。


これらの特殊な材料は、SK化研のような国内トップメーカーによって、日々研究開発が進められています。我々専門業者は、これらの材料の特性、メリット・デメリット、そして適切な施工方法を深く理解し、お客様の工場の状況(製造品目、洗浄方法、温度、稼働状況など)やご予算に合わせて、最適なソリューションをご提案する知識と経験を持っています。



4. 専門業者が実践する、生産を守るための3つの鉄則

優れた材料を選定しても、それを計画通りに、かつ安全に施工する技術と管理体制がなければ意味がありません。我々専門業者が、お客様の大切な生産活動を守るために、現場で徹底している3つの鉄則をご紹介します。


鉄則1:ゾーニング(区域分け)の厳守

食品工場内は、製品の安全性を確保するため、衛生レベルに応じて「汚染区域(原材料の受け入れ・保管エリアなど)」「準清潔区域(計量・調合エリアなど)」「清潔区域(加熱・冷却・充填・包装エリアなど)」といったゾーニング(区域分け)がなされています。我々は、工事計画段階からこのゾーニングを深く理解し、工事中もその境界を絶対に侵しません。作業員の動線、資材の搬入経路、廃材の搬出経路などを厳密に管理し、汚染区域の塵や菌が清潔区域に持ち込まれることによる交差汚染のリスクを徹底的に排除します。


鉄則2:コンタミネーション(汚染)対策の徹底

稼働中の生産ラインの隣接エリアで工事を行う場合、生産活動への影響を100%遮断するための対策が不可欠です。具体的には、以下のような専門技術を駆使します。


仮設間仕切りによる完全隔離

工事エリアをプラスチック製のパネルや防塵シートで完全に密閉し、独立した空間を作り出します。出入り口も二重扉にするなど、外部との接触を最小限に抑えます。


負圧集塵

工事エリア内の気圧を、隣接する生産エリアよりもわずかに低く保つ(負圧にする)ことで、空気の流れを常に工事エリア内に向かわせます。これにより、万が一、隔離が不完全であったとしても、粉塵や塗料の臭気が生産エリアに漏れ出すことを物理的に防ぎます。高性能な集塵機と排気フィルターシステムを使用します。


低臭・低VOC材料の選定

臭気が問題となる場合は、水性塗料や無溶剤タイプの塗床材など、臭いや揮発性有機化合物(VOC)の発生が極めて少ない材料を選定します。


鉄則3:現場に合わせた最適なソリューション提案

我々は、単にお客様から言われた通りに塗装するだけの業者ではありません。まず、お客様の製造品目、日々の洗浄方法(使用薬剤、温度、頻度)、床や壁にかかる物理的な負荷(台車やフォークリフトの重量・頻度)、そして将来の生産計画や設備更新の予定までを詳細にヒアリングします。その上で、「なぜこの材料が必要なのか」「なぜこの工法が最適なのか」「長期的に見てどのようなメリットがあるのか」を、専門知識に基づいて論理的にご説明し、お客様と共に最適なソリューションを作り上げていきます。時には、塗装以外の解決策(例:床材の張替え、壁パネルの設置)をご提案することもあります。



まとめ:貴社の安全は「投資」に値する

食品工場の改修は、単なる修繕費という「コスト」ではありません。それは、貴社の製品の安全性、ブランドの信頼性、従業員の安全、そして事業そのものの継続性を守るための、極めて重要な「投資」です。


目先の価格の安さだけで業者を選定した結果、HACCP監査で不適合となったり、異物混入事故で回収騒ぎになったり、あるいは短期間で再工事が必要になったりするリスクは、決して無視できません。その損失は、当初の工事費用の差額など比較にならないほど甚大です。


「自社の工場は大丈夫だろうか?」「監査に向けて、どこをチェックすれば良いのだろうか?」と少しでも不安に思われた方は、まずはお気軽に栄城建装へご相談ください。HACCPの知識と食品工場特有の環境への深い理解を持つ専門家が、貴社の事業を守るための、客観的な視点から現状診断とアドバイスをさせていただきます。


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